米オハイオ州トレドで化学物質漏えい メタクリル酸グリシジル流出で避難指示
避難対象地域の住民は約1000人に上り、さらに広い範囲で屋内退避が指示されている。当局は大気の測定と、タンク内の物質が危険な反応を起こす可能性の監視を続けている。この化学物質は樹脂や塗膜材料の製造に使われる。

米オハイオ州トレド北部で、メタクリル酸グリシジル(英語名 glycidyl methacrylate)が漏れ、緊急の保護措置が取られている。20日火曜日の夜(米東部時間)に数百人の住民が自宅を離れた。市は21日水曜日、漏えいは続いており、現場周辺の避難指示と、より広い範囲の屋内退避指示の双方を維持していると発表した。
現場はProgress AvenueにあるMC Tank Transportのターミナルだ。米メディアが伝えた集計によると、避難指示の対象は約983人。懸念は二つある。目、皮膚、呼吸器を傷める可能性がある物質への接触と、タンク内で危険な反応が起きる可能性だ。
本記事は、市が米東部時間午前10時38分に更新した情報を基にしている。その時点では、規制の解除は発表されていなかった。
夜間の避難、学校や事業所にも影響
消防は火曜日午後10時48分、半径1マイル(約1.6キロ)の住民に避難を指示した。水曜日午前4時24分には、半径3マイル(約4.8キロ)で屋内退避を追加した。避難対象地域の人はその場を離れる一方、その外側で屋内退避の対象となる人は建物の中にとどまる必要があり、二つの指示は異なる。
市は、窓やドアを閉め、外気を取り込む換気設備を止め、ペットも屋内に入れるよう求めた。Shoreland Elementary Schoolには一時避難所を開設し、East Alexis Road沿いのMeijerの駐車場には赤十字の支援とTARTAのバスを配置した。
学校や企業の活動にも影響が出た。地元テレビ局13abcによると、Toledo Public SchoolsとWashington Local Schoolsは授業を取りやめ、近隣の事業所も避難した。移動式住宅の居住区Raintree VillageとAlexis Addition地区も影響を受けた地域に含まれる。対応は市境を越えており、The Sun Times Newsは、隣接するミシガン州モンロー郡でも学校などが閉鎖されたと報じた。
霧のため、街中で見えるものの判断も難しくなった。市は、霧と漏れ出た化学物質を見た目だけで区別することはできないと警告した。においがしても、吸い込んでいる濃度は分からない。保護措置の対象範囲は、公式の地図と緊急時の指示に従って確認する必要がある。
確認されたのは化学物質の放出で、爆発ではない
ウェイド・カプシュキェヴィチ市長は当初、この事態を「爆発」と表現した。しかし、その後レイチェル・ハート市報道官はUSA TODAYに対し、爆発は起きておらず、タンクから物質が放出され、大きな雲状に広がったと説明を訂正した。漏えいと爆発では、起きた事態そのものが異なる。ただし、どちらの場合も住民を守る措置が必要になり得る。
この訂正によって、対応班が距離を取る理由となった危険性までなくなるわけではない。当局は午前の説明で、専門家が爆発の可能性を評価する間、タンクへの接近を避けていたと明らかにした。市長は午前9時30分ごろの再評価に言及したが、その時刻になれば自動的に帰宅できるという意味ではなかった。
13abcが掲載した声明で、MC Tank Transportは自社の業務に関わる設備が事故に関係し、物質はメタクリル酸グリシジルだと確認した。同社は専門の対応要員などを動員し、当局と協力していると説明した。漏えいの原因はまだ明らかになっていなかった。
大気の測定が進行中 においだけでは濃度は分からない
市によると、米環境保護局(EPA)が避難区域の外周の複数地点で測定を監督しており、屋内退避区域の外周でも追加の検査を行う予定だ。結果は判明し次第公表するとしている。濃度と接触時間が分からないまま、雲状に広がった物質の画像から個人のリスクを算出することはできない。
市は、症状がある場合は医療専門家に相談し、呼吸困難などの重い症状では救急外来を受診するか、米国の緊急通報番号911に連絡するよう勧めた。地元報道によると、保安官事務所の職員1人が診察のため病院を訪れ、状態は深刻ではないとされた。ただし、この事例だけで接触した人の全体像が分かるわけではない。
メタクリル酸グリシジルとは?
メタクリル酸グリシジルはGMAとも呼ばれる無色の液体で、モノマーとして使われる。モノマーとは、ほかの分子と反応してポリマーを形成する分子のことだ。国際がん研究機関(IARC)によると、主にエポキシ系ポリマーやビニル・アクリル樹脂の製造に用いられ、それらは接着剤、シーリング材、塗膜材料などに利用される。
工業的に役立つのは反応性があるためだが、それだけに管理が必要となる。米海洋大気局(NOAA)のCAMEOデータベースは、加熱によって激しい重合反応が起きる可能性を指摘している。トレド市が公開した安全データシートも、可燃性があり、加熱された容器が爆発する可能性があると記載している。これらは物質の性質を示すもので、今回のタンク内で何が起きたかを証明するものではない。
国際労働機関(ILO)と世界保健機関(WHO)の国際化学物質安全性カードによると、この物質は吸入、皮膚接触、飲み込みによって体内に入る。目、皮膚、呼吸器を強く刺激し、繰り返し接触すると、皮膚がアレルギー反応を起こしやすくなる「皮膚感作」が生じる可能性がある。より新しい技術資料では、皮膚のやけどや重い眼損傷にも注意を促している。
IARCは、この物質を「ヒトに対しておそらく発がん性がある」グループ2Aに分類している。これは実験で得られた証拠に基づいて危険性を示す分類であり、住民一人ひとりのリスクを数値化するものではない。接触することがあっても、それだけで必ずがんになるという意味でもない。また、放出されたモノマーと完成した製品は区別する必要がある。同機関は、すでに重合した材料を使うことで、このモノマーにさらされることは想定していない。トレドで直ちに問題となるのは、放出された物質そのものと、住民がそれにどの程度接触したかだ。